睡眠は生命維持に欠かせない行為の一つです。
そんな睡眠に注目してビジネスを展開している企業は多数あり、人々の睡眠の質向上に貢献しています。
睡眠ビジネスの市場は拡大傾向にあり、今後も成長が期待されています。
今回は睡眠ビジネス市場の動向や注目される理由、睡眠と美容の関係性についてご紹介しましょう。
睡眠ビジネス市場の動向
睡眠ビジネスというと、医療機器や医薬品、寝具、機能性食品などの商品・サービスが該当します。
最近はスリープテックと呼ばれるITやAIなどの技術を活用した睡眠サービス・システムを展開する市場も立ち上がっています。
市場調査・コンサルティングを行うEmergen Researchによると、2023年の睡眠ビジネス市場は世界全体で約72兆円でした。
今後は、年平均6.3%で成長していき、2030年には110兆円に到達することが見込まれています。
睡眠に関する様々なビジネスが存在しますが、特に市場が拡大しているのは、睡眠の質の向上・改善を謳う商品の市場とスリープテックです。
株式会社富士経済によれば、グリシンやGABA、乳酸菌など睡眠の質を高める成分を含む商品の市場規模は、2022年は140億円になると推計されており、今後も拡大が見込まれています。
また、株式会社矢野経済研究所によれば、国内のスリープテック市場は、2022年の時点で60億円でした。
2023年は105億円、2024年は140億円になると予測されており、今後も順調に拡大していくことが期待されます。
睡眠ビジネスが注目されている理由
睡眠ビジネス市場は全体的に拡大傾向にありますが、どのような理由で注目されているのでしょうか?
ここで睡眠ビジネスが注目される理由をご紹介します。
睡眠は心身の健康に影響を与える
睡眠は心身の健康に影響を与えるため、質の向上や改善につながるビジネスに注目が集まっています。
睡眠不足になると死亡率が上昇する傾向にあります。
平均睡眠時間が6~7時間の場合、7~9時間と比べて死亡リスクが4%程高くなるようです。
1日の睡眠時間が6時間未満となると、6時間以上睡眠が取れている人と比べて10%程高くなります。
睡眠不足になると日中に眠気を感じやすくなり、また仕事に行くことが憂鬱だと感じる傾向にあります。
このことから、睡眠は心身の健康を保つために大切な行為です。
生産性と経済活動にも影響を与える
睡眠不足は生産性や経済活動にも影響を与えることがわかっています。
睡眠が不足していると注意力が散漫したり、物事に集中できなくなったりします。
その影響で業務効率が下がったり、ヒューマンエラーが起きやすくなったりするので、生産性の低下を招くでしょう。
睡眠不足が原因で病気になり、健康的に働けなくなる人も増える可能性があります。
生産性が低下や健康を理由に離職が増えれば企業活動にも影響が出て、そのような企業が多発すれば経済全体にも悪影響が出てしまうでしょう。
睡眠不足の人は睡眠に問題がない人と比べて、医療費も高くなる傾向にあるので、個人にかかる費用の負担も大きくなる可能性があります。
日本人は睡眠不足が多い
OECD Gender Data Portalによると、日本人の平均睡眠時間は7時間22分です。
OECDに加盟する30ヵ国の中でも日本の睡眠時間は低い結果となっています。
なお、最長のアメリカは8時間51分です。
日本人は睡眠時間が少ない傾向にあるため、心身の健康や生産性・経済活動に与える影響が出やすいと言えます。
それを回避するために睡眠の質向上・改善に貢献する睡眠ビジネスの需要が高まっており、市場規模も拡大傾向にあるのです。
睡眠と美容の関係性
睡眠は美容においても大切なものになるため、美容業界においても注目されています。
ここで、睡眠と美容の深い関係性についてご紹介しましょう。
睡眠中は成長ホルモンが分泌される
睡眠中には、成長ホルモンが分泌されます。
成長ホルモンは肌のオーバーターンを促進したり、肌の水分保持量を増やしたりする働きがあるホルモンです。
日中、ダメージを受けた肌は成長ホルモンによって修復されています。
また、オーバーターンが促されるので古い角質が剥がれ、新しい角質を押し上げていくことで、健やかな肌を保つことが可能です。
睡眠時間が短くなれば成長ホルモンの分泌量が減るので、肌トラブルがなかなか改善されない状態になってしまいます。
睡眠中はメラトニンが分泌される
睡眠中はメラトニンと呼ばれる物質も分泌されています。
メラトニンは睡眠にかかわるホルモンであるため、睡眠ホルモンとも呼ばれています。
睡眠ホルモンが分泌されると質の高い睡眠がもたらされ、それによって成長ホルモンの分泌が促進されるのです。
他にも活性酸素を除去してくれるので、シミやシワなど肌の老化を遅らせる効果にも期待できます。
成長ホルモンと同じく、睡眠不足になればメラトニンの分泌量が減るので、睡眠の質が低下したり、肌老化を加速させたりするリスクが高まるのです。
美容と睡眠のために心がけたい生活・食習慣
美容は表面的なケアだけではなく、睡眠や食事といった内側からのケアによって健やかな美しさを手に入れることができます。
また、日々の生活や食事を改めることで、睡眠の質を向上させることが可能です。
ここで、美容や睡眠のために心がけたい生活・食習慣をご紹介しましょう。
生活リズムをなるべく崩さない
睡眠の質を高めるためには、一定の生活リズムを心がけることが大切です。
睡眠時間や起床時間がバラバラだと、自律神経のバランスが乱れやすくなります。
自律神経の乱れは、肌のオーバーターンの乱れにもつながるので、肌トラブルが起きるリスクが高まります。
また、心身にも影響を与えるので、生活習慣病やうつ病などのリスクも高まる恐れがあるでしょう。
毎日同じ時間に起床・就寝して、一定の生活リズムを保つようにしましょう。
朝起きたら日差しを浴びる
朝起きたら日差しを浴びることをおすすめします。
日光に当たると体内時計がリセットされるので、活動するモードに切り替わります。
光による刺激で目が覚めるので、朝からすっきりした気分で活動することができます。
そして、夜になると活動モードが解除されるので、就寝時間を迎える頃には自然と眠気が強くなるのです。
結果的にスムーズな入眠につながり、質の高い睡眠をとることができます。
栄養バランスを意識した食事を心がける
食事は栄養バランスを意識することが大切です。
人の体は様々な栄養素で構成されているので、偏り過ぎず、満遍なく色々な栄養素をとることを心がけてください。
また、睡眠の質を高めたいのであれば、それにつながる栄養素がとれる食材を積極的に食べるようにしましょう。
睡眠の質を高める栄養素には、トリプトファンやたんぱく質、ビタミン類があります。
大豆食品や乳製品、魚、フルーツ、芋類などによく含まれています。
糖質はとり過ぎると美容の大敵ですが、体にとってはエネルギー源になるので適度にとるようにしましょう。
食事は1日3食をなるべく同じ時間帯に食べ、よく噛んで食べることも大切です。
適度に運動をする
適度に運動をすることも美容や睡眠には大切です。
運動内容にもよりますが、筋力のアップや脂肪燃焼を高める効果に期待できます。
また、ストレスの発散につながったり、適度な疲労感を得られたりするので熟睡効果にもつながります。
運動は継続することに意味があるので、ヨガやウォーキング、筋トレなど続けやすい運動を選ぶことがポイントです。
日本は睡眠時間が少なく、睡眠の質が悪い傾向にあります。
心身や美容に悪影響を与えることがあるため、睡眠の質向上・改善に着目したビジネスに注目が集まっています。
睡眠ビジネス市場は世界規模で拡大しており、日本でも今後伸び続ける市場と言えるでしょう。
睡眠の質を上げて健やかな美しさを手に入れたい方は、生活習慣を見直したり、睡眠に関する商品・サービスを活用してみたりすると良いでしょう。